競輪の戦法にはさまざまな種類がありますが、その中でも「つっぱり先行」は特に注目される戦法の一つです。
つっぱり先行とは、レースの序盤から先頭を譲らず、後続の選手の仕掛けを封じながら走る戦法です。持久力が求められるため、特に地脚タイプの選手が得意とします。
また、近年のルール変更や7車立てレースの増加により、つっぱり先行の有効性が高まっています。バンクの形状や天候によっても影響を受けるため、どのような条件で成功しやすいのかを理解することが重要です。
この記事では、つっぱり先行の定義や他の戦法との違い、有利なレース展開、適性のある選手について詳しく解説します。競輪をより深く楽しむために、ぜひ最後までご覧ください。
- つっぱり先行の定義や特徴、他の戦法との違い
- つっぱり先行が有効なレース展開や適性のある選手
- ルール変更やバンク・天候の影響による戦法の変化
競輪の「つっぱり」とは?

競輪の「つっぱり」とは?
つっぱり先行の定義と特徴
つっぱり先行とは、競輪における先行戦法の一つで、最初から前を譲らず、後続の仕掛けを阻止しながらレースを進める戦法です。通常、レースの中盤で後方の選手が仕掛けて前へ出ようとしますが、つっぱり先行ではそれを許さず、スピードを上げて先頭をキープします。
つっぱり先行の特徴
- 最初から前の位置を確保し、最後まで守る
- スピードを維持しながらレースを進めるため、持久力が求められる
- 他のラインの選手が仕掛けてきても、前を譲らずに加速する
- ラインの選手と連携しやすく、チームでの決着を狙いやすい
つっぱり先行のメリット
- ラインで決着しやすい:味方の選手が後続をブロックしやすく、ラインの選手が上位に入りやすい
- レースの主導権を握れる:自分のペースを作りやすく、他の選手の動きを抑制できる
つっぱり先行のデメリット
- 消耗が激しい:常に高いスピードを維持する必要があり、終盤に失速するリスクがある
- 後続に差されやすい:ゴール直前で脚がなくなり、追込み選手に抜かれる可能性が高まる
他の戦法との違いとは?
競輪には複数の戦法があり、それぞれに異なる特徴があります。ここでは、つっぱり先行と他の戦法の違いを比較します。
つっぱり先行 vs. 抑え先行
戦法 | つっぱり先行 | 抑え先行 |
---|---|---|
位置取り | 最初から先頭をキープ | 後方から仕掛けて前へ |
ペース | 一定のスピードを維持 | 徐々にペースを上げる |
向いている選手 | 地脚タイプ(持久力がある選手) | バランス型の選手 |
抑え先行は、後方からレースを動かして前に出るため、つっぱり先行と異なり、一度位置を譲って仕掛けるのが特徴です。
つっぱり先行 vs. かまし先行
- つっぱり先行:最初からスピードを上げて主導権を握る
- かまし先行:終盤に一気に加速し、前の選手を抜いて先行する
かまし先行は、スプリント能力の高い選手向けの戦法であり、短時間で最高速度に到達できる選手が得意とします。一方で、つっぱり先行は長時間のスピード維持が必要であり、地脚タイプの選手に適しています。
つっぱり先行 vs. 捲り
捲りは、後方に待機していた選手が終盤で一気に加速して前の選手を抜く戦法です。
- つっぱり先行:最初から先行してレースを支配する
- 捲り:後方からタイミングを見極めて一気に前へ
捲りは単独での勝利が多いのに対し、つっぱり先行はライン全体で勝ちやすいという違いがあります。
つっぱりが有効なレース展開
つっぱり先行は、特定の条件下で特に効果を発揮します。どのようなレース展開がこの戦法に適しているのかを見ていきましょう。
1. ラインの人数が多いレース
- 3人以上のラインが組まれている場合
- 他のラインが2人以下である場合
ラインの人数が多いと、後続選手のブロックがしやすく、つっぱり先行の成功率が高まります。特に、相手ラインの人数が少ない場合、前を譲らずにペースを作ることが可能です。
2. バンクの特性に合った展開
バンクの種類 | つっぱり先行の有効度 | 特徴 |
---|---|---|
33バンク | 高い | 短い直線と急なコーナーがあり、逃げやすい |
400バンク | 標準 | 戦法の選択肢が多く、つっぱり先行も可能 |
500バンク | 低い | 直線が長く、後続に差されやすい |
短距離バンクでは、つっぱり先行が有利になりやすく、逃げ切る可能性が高くなります。一方、500バンクのような長距離バンクでは、後方の選手に捲られるリスクがあるため、慎重なレース運びが求められます。
3. ルール変更や気象条件の影響
- ルール変更:誘導員を抜くタイミングの制約が増え、つっぱり先行が増加傾向にある
- 7車立てレース:ラインが短いため、つっぱり先行が有効になりやすい
- 悪天候(雨・強風):追込みが決まりにくくなり、前を走る選手が有利になる
特に、最近の競輪では7車立てのレースが増えたため、つっぱり先行を選ぶ選手が多くなっています。また、雨や強風の影響を受けると、後方の選手が動きにくくなり、つっぱり先行がより効果的になります。
つっぱり先行に向いている選手の脚質

つっぱり先行に向いている選手の脚質
地脚タイプの選手が有利な理由
つっぱり先行は、競輪において持久力と安定したペースを維持する力が求められる戦法です。そのため、長い距離を一定のスピードで走り続けられる「地脚タイプ」の選手が特に有利になります。
地脚タイプの特徴
地脚タイプの選手は、短時間で爆発的な加速をするよりも、スピードを落とさずに長い距離を踏み続ける能力に長けています。この特性がつっぱり先行と非常に相性が良い理由は以下の通りです。
- 長い距離を一定のペースで走れる:つっぱり先行では、先頭を維持するために長時間スピードを落とさずに走る必要がある
- 序盤から高い巡航速度を維持できる:後方から仕掛けてくる選手に対抗するために、途中でスピードを緩めず走る能力が求められる
- 持久力があるため最後まで耐えられる:先行した状態で逃げ切るには、ラストスパートで体力が残っていることが重要
つっぱり先行で求められる能力
つっぱり先行を成功させるには、以下のような能力が必要になります。
- スタートからすぐに高い巡航速度に到達できる
- 中盤でペースを落とさずに走れる
- ゴール前で粘り強く踏み続けられる
このため、短距離での爆発的な加速よりも、一定のスピードを維持する力が強い地脚タイプの選手に向いている戦法と言えます。
スプリンタータイプとの違い
スプリンタータイプの選手は、短時間でトップスピードに到達する能力に優れています。しかし、つっぱり先行に求められる「持久力」とは異なる特徴を持っているため、この戦法を得意とするケースは少なくなります。
スプリンタータイプの特徴
- 爆発的な加速力が強み:短い距離で一気にスピードを上げることができる
- 短時間でのトップスピード到達が可能:最後の直線勝負に向いている
- 持久力よりも瞬発力を重視する
スプリンタータイプの選手は、通常「捲り」や「かまし先行」のように、短い距離で一気に前の選手を抜く戦法を得意とします。つっぱり先行のように長時間ペースを維持し続けるレース運びは不得意なことが多いです。
つっぱり先行におけるスプリンタータイプの課題
スプリンタータイプの選手がつっぱり先行を選択すると、以下のような問題が発生することがあります。
- 序盤からの長時間の先行に耐えられない
- トップスピードに到達しても、その速度を維持するのが難しい
- 終盤にスタミナが尽き、後続に抜かれやすい
このため、スプリンタータイプの選手は、つっぱり先行よりも短時間で勝負を決める「かまし先行」や「捲り」が適しているケースが多いと言えます。
データから見るつっぱり適性
競輪では、選手の戦法や脚質が数値データとして記録されており、そのデータを分析することで「つっぱり先行に向いている選手」を見分けることができます。
つっぱり先行に向いている選手のデータ傾向
以下のようなデータを持つ選手は、つっぱり先行に適している可能性が高いです。
項目 | 傾向 | つっぱり適性 |
---|---|---|
スタート(S)回数 | 多い | 先行意識が強く、つっぱり向き |
バック(B)回数 | 多い | 先頭を維持する能力がある |
捲りの決まり手 | 少ない | 捲りより先行を得意とする |
ゴール時の着順 | 2着以内が多い | ラインで決着しやすい |
データが示すつっぱり先行のポイント
- スタート(S)を取る回数が多い選手は、最初から先行する意識が強い
- バック(B)回数が多いと、レースの主導権を握る能力が高い
- 捲りの決まり手が少ない選手は、長い距離を踏み続ける戦法を得意とする
- ライン決着を重視する選手は、つっぱり先行を選びやすい
つっぱり先行の適性を見極める方法
選手のデータを見る際には、以下のような点をチェックすると、つっぱり先行を選ぶ可能性が高い選手を見つけることができます。
- スタート直後に積極的に前を取りに行くか
- バック(B)の回数が多く、先行する意識があるか
- 捲りに頼らず、先行で勝負しているか
これらのデータを総合的に判断することで、つっぱり先行に向いた選手を見極めることが可能になります。
つっぱり先行のメリットとデメリット

つっぱり先行のメリットとデメリット
ラインで決着しやすい戦法
競輪では、選手同士が「ライン」と呼ばれるグループを形成し、協力しながらレースを進めます。つっぱり先行は、このラインを活かしやすい戦法の一つです。
つっぱり先行とラインの関係
つっぱり先行は、最初から先頭を維持しながらペースを作る戦法です。そのため、ラインの他の選手が後方の動きをブロックしやすく、レースの流れをコントロールできます。
- 先行選手がリズムを作る → 後方の仕掛けを遅らせられる
- 番手選手がフォローする → 後続の追い上げを防ぐ
- 最後までラインが崩れにくい → ゴール前での争いが限定される
特に、3人以上のラインが組まれている場合、ライン内の選手同士で有利な位置取りをしやすくなります。
ライン決着のメリット
つっぱり先行では、ラインの選手同士が協力しやすいため、以下のようなメリットがあります。
- 勝ちパターンを作りやすい:先行選手が主導権を握り、レースを支配できる
- ライン内で上位を独占しやすい:味方の選手と連携しながら走れるため、他のラインを抑えやすい
- オッズが安定しやすい:本命ラインが決まりやすく、予想が立てやすい
このため、つっぱり先行はラインで決着しやすく、競輪の戦略としても有効な戦法となります。
体力消耗のリスクと戦略的考え方
つっぱり先行は、序盤から高いスピードを維持するため、他の戦法と比べて体力消耗が激しくなります。そのため、戦略的にどのように体力を配分するかが重要です。
つっぱり先行の体力消耗のポイント
- 序盤から高いスピードを維持するため、エネルギー消費が激しい
- ゴールまで持ちこたえられないと、最後に後続選手に差されやすい
- 強い向かい風や長い直線のあるバンクではさらに負担が増す
体力を温存するための戦略
つっぱり先行の選手は、消耗を最小限に抑えるため、以下のような戦略を取ることが重要です。
- 序盤で無駄な動きを避け、エネルギーを節約する
- 自分のペースで走れる位置取りを確保する
- ラインの番手選手のサポートを受けながら、負担を分散させる
また、レース中の駆け引きによって、できるだけ少ない力で先行の位置を確保することも重要になります。
体力消耗を見極めるポイント
選手の体力消耗度は、以下のような要素で判断できます。
項目 | 負担の大きさ |
---|---|
風の影響 | 強い向かい風があると消耗しやすい |
バンクの長さ | 長い直線があると後続の仕掛けを受けやすい |
他のラインの動き | 他のラインが積極的に仕掛けてくると消耗が激しくなる |
このように、つっぱり先行を成功させるためには、体力を無駄に使わないレース運びが重要になります。
バンクや天候による影響
つっぱり先行は、バンクの形状や天候によって成功率が大きく変わる戦法です。ここでは、それぞれの影響を詳しく解説します。
バンクの影響
バンクの形状は、つっぱり先行の有利・不利を左右します。
バンクの種類 | 特徴 | つっぱり先行の適性 |
---|---|---|
33バンク(短走路) | コーナーが多く加速しにくい | 有利(逃げやすい) |
400バンク(標準) | バランスの取れたレース展開 | 状況による |
500バンク(長走路) | 直線が長く後続が捲りやすい | 不利(差されやすい) |
特に33バンクのような短走路では、後続の選手が加速しにくいため、つっぱり先行が決まりやすくなります。一方、500バンクでは直線が長いため、終盤に後方の選手が追い込みやすく、つっぱり先行が厳しくなる傾向があります。
天候の影響
天候も、つっぱり先行の有利・不利に大きく関係します。
天候 | 影響 | つっぱり先行の適性 |
---|---|---|
追い風 | 先行選手が加速しやすい | 有利 |
向かい風 | 体力を消耗しやすい | 不利 |
雨 | 路面が滑りやすく、追込みが難しくなる | 有利 |
晴天 | 通常のレースコンディション | 影響なし |
向かい風が強い場合は、前を走る選手が最も影響を受けるため、つっぱり先行の成功率が下がります。一方で、雨天時は追込み選手が踏み込みにくくなるため、つっぱり先行が決まりやすい傾向があります。
このように、バンクの形状や天候を考慮しながら戦法を選択することが、勝利につながる重要なポイントとなります。
近年のつっぱり先行の傾向とルール変更

近年のつっぱり先行の傾向とルール変更
ルール変更による影響とは?
競輪では、選手の安全やレースの公正性を保つために、定期的にルールが改定されます。これにより、戦法の選択やレースの展開が変化することがあります。特に、つっぱり先行に関係するルール変更は、レースの駆け引きに大きな影響を与えています。
ルール変更の主な内容
近年の競輪では、以下のようなルール改定が行われました。
- 誘導員を追い抜くタイミングの制限
- 残り2周半のバック以降での動きの制約
- 競技の安全性向上を目的とした走行ルールの強化
つっぱり先行への影響
これらのルール変更は、特に先行戦法に影響を与えています。
-
誘導員の追い抜き制限
以前は、選手が早い段階でペースを上げ、自由に先行争いを仕掛けることが可能でした。しかし、ルール変更により、誘導員を追い抜くタイミングが制限されたため、序盤の駆け引きが抑制されるようになりました。結果として、先行選手が誘導を長く使えるようになり、つっぱり先行の選択肢が増えています。 -
レース終盤の展開変化
かまし先行を得意とする選手にとっては、早めに仕掛けることが難しくなり、つっぱり先行の選手が主導権を握りやすくなりました。そのため、地脚タイプの選手がより有利な環境になったと考えられます。
ルール変更後のレース傾向
変更前 | 変更後 |
---|---|
早めの仕掛けが多く、展開が不安定 | 先行選手が主導権を握りやすい |
かまし・捲りの成功率が高い | つっぱり先行が増加 |
このように、ルール変更によってつっぱり先行が増え、戦法の選択にも変化が生じています。
7車立てレースの増加と戦法の変化
近年、7車立てのレースが増加したことで、競輪の戦法にも影響が出ています。特に、つっぱり先行を選ぶ選手が増えている傾向が見られます。
7車立てレースの特徴
7車立ては、従来の9車立てレースと比べて以下のような違いがあります。
項目 | 7車立て | 9車立て |
---|---|---|
ラインの構成 | 2~3車のラインが基本 | 3~4車のラインも可能 |
レースの展開 | 先行しやすい | 捲り・追込みの選択肢が増える |
選手同士の駆け引き | シンプルになりやすい | 複雑な戦略が求められる |
7車立てではラインの人数が減るため、1つのラインがレースを完全に支配することが難しくなります。そのため、先行した選手が有利になりやすく、つっぱり先行が決まりやすい状況が増えています。
つっぱり先行が増える理由
- ラインの人数が少ないため、他のラインに主導権を取られにくい
- シンプルな展開になり、逃げやすくなる
- 後方の選手が仕掛けにくく、つっぱりが成功しやすい
7車立てでは、短いラインの選手が協力しづらくなるため、最初から先行してしまう方が有利になる場面が多くなります。そのため、強い先行型の選手がいれば、つっぱり先行が選ばれる確率が高まります。
7車立てレースの戦法の変化
- 先行型が増加し、つっぱり先行の有効性が上がる
- 追込み型の選手が不利になりやすい
- スプリンタータイプよりも地脚タイプの選手が活躍しやすい
このように、7車立ての増加によって、つっぱり先行がより有効な戦法となっています。
オッズと買い目の考え方
つっぱり先行が多いレースでは、オッズの傾向も変わります。適切な買い目を考えることで、的中率を高めることが可能です。
つっぱり先行があるレースのオッズ傾向
-
本命ラインのオッズが低くなる
つっぱり先行が決まりやすい場合、ラインの選手が上位を占める可能性が高いため、本命ラインのオッズは下がります。 -
「差し」の目が増える
つっぱり先行では、先行選手がゴール前で失速することがあるため、番手選手の差しが決まりやすくなります。そのため、2着・3着を考慮した買い方が重要になります。 -
大穴が出にくい
ライン決着が多くなるため、予想しやすくなり、大きな配当は狙いにくくなります。
つっぱり先行レースの買い目の考え方
買い方 | 特徴 |
---|---|
本命買い | 先行選手+番手選手での決着を狙う |
差し狙い | 先行選手が失速する可能性を考慮し、番手選手を1着にする |
広めのフォーメーション | 先行選手が粘るパターンと、失速するパターンの両方をカバーする |
具体的な買い方の例
- 先行選手が強い場合:「1-2-3」のようにライン決着を狙う
- 差しが決まりやすい場合:「2-1-3」のように番手選手を1着にする
- 荒れる可能性がある場合:「1-3-5」など、フォーメーションで広く抑える
このように、つっぱり先行が多いレースでは、オッズの傾向を把握し、適切な買い目を選ぶことが重要です。
まとめ

まとめ
つっぱり先行は、競輪における先行戦法の一つで、序盤からスピードを維持し、後続の仕掛けを許さない戦法です。
この戦法は、地脚タイプの選手に適しており、特にラインの人数が多い場合に有利になります。また、短いバンクや悪天候時には、後続の追い込みが難しくなるため、成功率が高まります。
近年のルール変更により、誘導員を長く利用できるようになったことで、つっぱり先行の有効性が増しました。さらに、7車立てレースの増加により、ライン決着がしやすくなり、この戦法が選ばれるケースが増えています。
オッズの面では、本命ラインが決まりやすく、差し目の可能性も高くなるため、買い目を工夫することで的中率を上げることが可能です。
つっぱり先行は、戦略的な判断と持久力が求められる戦法であり、レース展開を見極めることが成功の鍵となります。